| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨 |
一般講演(口頭発表) G2-07
クローナル植物は、種子からではなく、根・茎・葉などの栄養器官から植物を繁殖させる方法で、親株と遺伝的に同じ個体をふやすことが出来る。その為、種子繁殖のように遺伝子組み換えによって病気にかかりにくい遺伝子を作ることができず、親株が病気にかかっている場合、子供も病気に感染しやすくなる。
コンタクトプロセスは、伝染病の伝播を表す簡単なモデルとしてHarris(1974)によって導入され、接触過程や接触感染過程とも呼ばれる。数学的には配置空間に値をとる連続時間上のマルコフ過程に属している。グラフの各頂点に人がいると考えると、健康な人はグラフ上で隣にいる病人の数に比例した感染率λで病気に感染すると考える。
本研究では、二次元格子におけるコンタクトプロセスを用いて、クローナル植物の繁殖過程と病原体の伝播過程の二つのモデルを構築する。ここで、モデルを二つ構築するのは、植物の繁殖と病原体の伝播のタイムスケールの違いを考慮したためである。植物は、繁殖率pで隣接する格子点(空地)に繁殖し、死亡率dで死亡するとする。また、植物が空間を占めた後、病原体が空間中に侵入し、病原体の伝播力(感染率)λで隣接する格子点(健康な植物)に伝播する。さらに、感染した植物は死亡率eで死亡する。
以上のプロセスに関して、ペア近似を用いて、平衡点の導出、局所安定性を解析するとともに、ペア近似による解析結果と数値シミュレーションの結果を比較し、病原体侵入後の植物の生残率に関する考察を与える。