| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨 |
一般講演(口頭発表) G2-10
体サイズの大きな動物ほど栄養価の低い餌を食べるという傾向が、さまざまな動物群で広く知られている。大きな動物ほど多くのエネルギーを必要とし、実際、単一の種においては大きな個体ほど大きな餌を食べる傾向があることを考えると、非常に不思議な現象である。
動物がエネルギーを得るまでには、餌の探索(移動)、餌の獲得(摂食)、消費・吸収という一連の行動が必要となる。これら全ての行動に関する能力、移動速度や移動時の代謝、採餌速度や消化速度は体サイズの関数で表される。例えば、移動速度は体重の1/3乗に、代謝率は3/4乗に比例するというアロメトリー式は有名である。では、これらのスケーリング則はそれぞれどのように餌選択のスケーリングに影響を及ぼしているのだろうか。本研究はこの問題を定量的に解明するため、それぞれのスケーリング則を取り入れた最適採餌理論を作成した。餌質はエネルギーで評価し、質のよい餌ほど量が低いと仮定している。
結果として、既存の研究で考えられてきた採餌能力だけではなく、移動速度や移動時代謝のスケーリング則も、体サイズと餌質の負の相関に強い影響を及ぼすことが明らかとなった。移動中に消費するエネルギーは移動時間と移動時の代謝率との積で与えられる。餌の質と量や動物の体サイズによって移動に要する時間と採餌に要する時間との配分が変化することが、問題の現象に重要であるといえる。更に、この理論に、異なる移動様式(飛行、遊泳、歩行)における速度や代謝率を組み込めば、移動様式と餌選択の関係に応用することができるだろう。