| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨 |
一般講演(口頭発表) H2-04
二親性の胚乳(雄雌由来のゲノムを持つ)は、被子植物を特徴づける形質である。その進化的起源の有力仮説に余剰胚仮説がある。通常卵と余剰卵が形成され、両者が共に受精する(重複受精)。そして、余剰胚(余剰卵由来)が、通常胚(通常卵由来)の成長を助けるようになったという仮説だ。この戦略が有利なのは、以下が、祖先的状態とされるためである。
・一つの雌性配偶体の中に複数の通常卵(余剰卵ではなく)が形成される。
・その内の一つのみが生存する。
・複数の花粉親が、同じ雌性配偶体内の通常卵を受精させる。
雄親間競争があるので、その雄親が受精させた通常胚の生存率を高める戦略が有利となる。しかし実は、この戦略は雄親にとって有利でしかない。同じ雌性配偶体内の通常卵は遺伝的に同一なので、雌親にとっては、どの通常卵が生存しても構わないからである。にもかかわらず、なぜ、「通常卵と余剰卵を形成する」という「雌形質」が進化したのか。本研究では、この雌形質を発現する遺伝子が広がるかどうかを理論的に解析した。その結果、「一花粉が精子を二つ作る(重複受精可となる)」という雄形質を発現する遺伝子にヒッチハイクして、広がることがわかった。