| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨 |
一般講演(口頭発表) H2-06
ゲノム上の塩基配列の変化を伴わないエピジェネティックな変異は、細胞分化や個体発生の過程での遺伝子発現制御に重要な機構である。DNAメチル化はエピジェネティックな機構の一つであり、環境条件や成長過程に伴い変化する一方、細胞分裂後も安定に維持・継承される場合もあることが知られている。
クローナル植物は、栄養器官からのクローン成長により新たな植物体(ラメット)を生産することから、遺伝的個体であるジェネットは、複数の独立したラメットから構成され、空間的に広く分布している。このような植物では、同一遺伝子を保有するラメットが生育地の不均一な環境に遭遇と考えられるため、ジェネティックな変異に加えエピジェネテッィクな変異が生育地の微小な環境変化への適応に重要な役割を果たしている可能性が高い。
そこで本研究では、DNAシトシン塩基へのメチル基修飾パターンの違いを認識する二種類の制限酵素を用いたAFLP法(methylation-sensitive amplified polymorphism)によりDNAメチル化解析を行った。地下茎によりクローン成長を行うコンロンソウ(Cardamine leucantha)を対象に、ラメット内,ラメット間,ジェネット間でのメチル化を定量し、空間的な変異パターンを解析した。その結果、メチル化のパターンは近縁・近隣であってもジェネットごとに異なっていた。また、同一ジェネット内でもメチル化変異が見られたが、これらは近い場所に位置するほど類似したパターンを示すことがわかった。一方で、被度に基づいた環境との相関は遺伝子座ごとに異なっており、これらのメチル化変異はゲノムの様々な領域に及ぶことが示唆される。