| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨


一般講演(口頭発表) H2-07

間伐にともなうヒノキ個体群の成長反応について

*多胡潤哉(龍谷大・理工), 石井将貴(龍谷大・理工),宮浦富保(龍谷大・理工)

放棄林における密度管理の効果を明らかにすることを目的として、バンドデンドロメータを用いてヒノキ個体の幹の肥大成長を調べた。対象は、林齢およそ80年の管理放棄されたヒノキ人工林であり、0.91の収量比数が0.7になるよう2010年3月に間伐を行った。平面分布の一様化を目指し、小径木や形態異常木を優先して伐採した。これにより、平均胸高直径は非間伐区に比べて大きくなった。

胸高断面積合計、平均胸高直径の年間成長量および相対成長量については、間伐区と非間伐区で大きな差はなかった。立木密度が減少したことにより、間伐区の林床の相対照度が大幅に上昇し、夏の猛暑にともなって土壌含水率(深さ0~10㎝)が低い値を示した。季節的成長反応については、8月にのみ間伐区で胸高断面積と成長量のより強い相関が確認できた。土壌呼吸量は間伐区の方が低い傾向にあったが、7月から8月の土壌呼吸量は、非間伐区よりも間伐区のほうが高かった。これは、現存量が大きい非間伐区において、樹木の蒸散によって地表付近よりさらに深い土壌の水分を多く消費したことが考えられる。幹の肥大成長と林床の相対照度との間にも相関関係は見られなかった。間伐によりヒノキの平均胸高直径が増大したにもかかわらず、間伐後の成長量に明確な差が現れなかったのは、明るい環境に対して光合成等の生理的な適応が間に合わなかったためと思われる。

間伐にともなう林分構造の変化と成長との関係について詳細な解析例を報告する。


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