| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨


一般講演(口頭発表) I1-02

日本における侵入害虫の分布拡大パターンの侵入順序解析による類型化

森本信生(中央農研),小池文人(橫浜国大)

我が国には500種近くのダニ目や昆虫がすでに侵入しており,今後も新たな害虫が侵入し分布拡大する可能性は高い.そこで,新たな侵入種の分布拡大を阻止するために分布拡大の予測が求められている.これまで外来種の分布拡大を記述するために,特定の種を対象とした拡散方程式を基本としたモデルが提出されている.しかし,このようなモデルを実際の予測に用いるには次のような問題点がある.すなわち,分布拡大の手段が人為的な物流物資,例えば苗などの流通に便乗して分散する場合は,飛び地的な発生となる.したがって,周辺地域に徐々に分散していくことを前提としている拡散方程式では,充分な記述は困難となる.また,多くのモデルは特定の種のみを対象としているために,モデルの対象となっていない種に対して単純に拡張できるとは限らない.この問題を解決するための一方法として、これまでに知られている複数の侵入害虫の分布拡大を、侵入順序にしたがってパターン化することが考えられる.そのためには,多くの外来種の分布拡大過程に関するデータが必要であるが,日本では多くの種で質の高い情報が存在しており,その活用が可能である.そこで,日本に侵入し分布を拡大した主な外来害虫17種の分布拡大を,各都道府県における侵入順序に注目して解析した.その結果,各害虫の分布拡大のパターンは,5つに類型化された.すなわち,イネミズゾウムシなどを含む関東東海型,アルファルファタコゾウムシやマツノザイセンチュウなどを含む西日本型,クリタマバチなどを含む近畿型と,オンシツコナジラミなどを含む蔓延型,タバココナジラミバイオタイプQなどを含む急速分布拡大型であった.日本における分布拡大のパターンは,侵入した地域が重要な要因であることが示唆された.


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