| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨


一般講演(口頭発表) I1-13

アライグマ捕獲用巣箱型わなの開発

*阿部豪, 兵庫県立大学

アライグマの地域的根絶を図るためには、繁殖前の冬季間にメスを効率的に除去することが有効である。しかし、妊娠中のメスは誘引餌への反応も悪く、箱ワナによる捕獲だけでは目標の達成は困難である。

そこで本研究では、繁殖期のメスが越冬・繁殖用に樹洞などの巣穴を必要とするアライグマの習性を活かして、巣箱型わなを開発し、その機能試験を行なった。巣箱型わなの形状およびサイズについては、原産国で実用実績のある木製巣箱を参考にし、アライグマの自重により作動するトリガーの仕組みと逃亡防止用のストッパーを開発した。

試験では、1)誘引餌を用いずに、アライグマを誘引できるか、2)捕獲したアライグマが脱出できないか、3)他動物の混獲を防げるかの3点について、飼育下及び野外環境で検証した。

試験の結果、1)飼育下で2頭、野外で4頭のアライグマ捕獲に成功した。捕獲に要した時間は、飼育下では、いずれもわな設置後1晩だったが、野外では、最長5か月を要した。また、野外試験では、8月に成獣メスが幼獣と一緒に捕獲されるケースも確認された。2)野外試験で一度、捕獲したアライグマが脱出した。わな作動時に進入口を塞ぐ遮蔽板が内側から破壊されたことが逃亡の原因であったため、新たに鉄製の補強板を追加し対応した。3)他動物の混獲は1例も発生していない。自動撮影では、テンの進入が複数回確認されたが、体重が軽く、わなは作動しなかった。鳥類のアプローチは記録されていない。

本試験の結果から、開発した巣箱型わなは、誘引餌を用いずにアライグマを選択的に捕獲、拘束できる可能性が示唆された。今後、試験機の数を増やして、捕獲に適したわなの設置環境や設置条件、繁殖期のメス捕獲に関する有効性の検討などを行う。

なお、本研究の一部は、平成20年度前田一歩園財団自然環境保全活動助成を受け実施した。また、飼育下試験の一部は、旭川市旭山動物園の協力を得た。


日本生態学会