| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨 |
一般講演(口頭発表) J1-02
北海道の針広混交林の林分動態を13年間にわたって調査した.この森林では,DBH 1.5 cm以上の個体で,落葉広葉樹30種と針葉樹のトドマツが出現した.13年間で個体密度は1677/haから1184/haへと約30%減少したが,胸高断面積合計値はほぼ一定であった(約49 m2/ha).個体密度の大きな減少は小サイズ個体の死亡の多さと新規加入個体の少なさによるものであった.新規加入個体数は時間とともに減少する傾向があったが,死亡個体数はほぼ一定であった.小サイズ個体の死亡の主な原因は被圧であった.DBH頻度分布の歪度は種によって異なっていた.ドロノキやウダイカンバのような耐陰性の低い種は小サイズ個体の少ないパターンであり,一方,イタヤカエデやシナノキのような耐陰性の高い種は小サイズ個体が多いパターンであった.13年間でほとんどの種で小サイズ個体が減少し,DBH頻度分布は変化した.耐陰性の高い種ほど個体密度が高く,また小サイズ個体,新規加入個体も多かった.さらに耐陰性の高い種ほど,大きな種子をもっていた.これらの結果は小さな種子をもつ耐陰性の低い種は,その種子の散布距離が長いために撹乱の後に素早く更新したが,林分の発達によって新規加入が途絶えたことを示している.一方,耐陰性の高い種は耐陰性の低い種の新規加入が途絶えた後も新規加入することができるが,林分の発達と共に下層では被圧が増すために死亡率が増加していた.したがって,調査した林分は撹乱後から種組成とサイズ構造の変化を伴いながら遷移の途中であり,そして耐陰性と種子サイズの種間差は林分構造の変化に重要であることを示唆している.