| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨


一般講演(口頭発表) J1-09

立山ハイマツ帯の果実数年変動

*野間直彦,曽根綾子(滋賀県立大・環),上原佳敏,久米篤(九州大・農)

山岳環境における果実数の年変動を知るため、立山のハイマツ帯に生育する木本種について5年間調査を行った。富山県立山の室堂平から浄土山にかけて、標高2400mから2750mの間に計5ヶ所の調査区を設けた。2006年から2010年まで、9月から10月上旬の間に1回調査区を回り、結実していた果実または果実の落ちあとを計数した。浄土山にある富山大学立山施設(標高2839m)の櫓の上で、「おんどとりJr」を用い30分ごとに測定した気温データを用い、各年の季節別平均気温を算出した。

調査できた種は、ガンコウラン、ウラジロナナカマド、タカネナナカマド、ベニバナイチゴ、コケモモ、マルバウスゴ、シラタマノキの液果をつける7種と、球果のハイマツであった。どの種も果実数は大きく変動した。ガンコウランでは2009年が最多で、ウラジロナナカマドは2007年が最多であった。この2種は2ヶ所の調査区に出現し、個体数も多かったが、種内で上記の傾向は一致していた。ベニバナイチゴは2007年、コケモモは2009年、マルバウスゴは2008年、シラタマノキは2006年、タカネナナカマドは2010年、ハイマツは2009年に最多であり、種間で最多年の一致は見られなかった。一方、結実数が最少の年は、ガンコウラン、ウラジロナナカマド、タカネナナカマド、ベニバナイチゴが2006年、コケモモとハイマツは2010年、シラタマノキは2008年であった。全体をあわせてまとめると、これらの種の結実数は、2007年と2009年に多く、2006年、2008年、20010に少ないという、大まかには1年おきに多少を繰り返す傾向がみられた。季節別平均気温は、2007年の春・2009年の夏が低く、2006年の夏に高くなっており、生育期間の気温が翌年の結実数に影響することが本調査地でもある可能性がある。


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