| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨 |
一般講演(口頭発表) J2-02
一般に、大径の道管を少数もつ環孔材は、多数の小径道管をもつ散孔材よりも通水効率が高い。しかし、乾燥により道管が閉塞すると、環孔材は通水性を大きく失い、散孔材はその低下が小さい。これらは、①通水性の損失を防ぐための失水調節や、②一度失われた通水性の乾燥解消後の回復により補償されているのかもしれない。本研究では、ケヤキ、コナラ、センダン(以上環孔材)、イヌシデ、シラカンバ、ヤマザクラ(以上散孔材)にて、①と②を検討した。
通水性の評価として、様々な乾燥下で木部の水ポテンシャル(Ψxylem)と木部の水分通導度(Ks)を求めた。①について、個体の乾燥(Ψxylemの低下)に伴う蒸散速度(E)および着葉量の変化を調べた。また、潅水を断ち、Ksを半分失うまでポット苗を乾燥させた後、再潅水し12時間経過したときのΨxylemとKsを求めた(②;ヤマザクラを除く)。
①より、ケヤキとコナラは、湿潤時でもEが低く、Ψxylemの低下に伴いKsもEも低下した。センダンは、乾燥初期に落葉し、残りの葉のEを高く維持したが、その後低下した。散孔材3種は、乾燥に対してまずEが低下した後、Ksが低下した。②において、乾燥解消後、環孔材3種はKsの顕著な回復が見られず、イヌシデとシラカンバではKsの回復の傾向があった。Ψxylemは全種で湿潤時と同程度まで回復した。
以上より、Ksの回復が不明確な環孔材は、低いEによって、特にセンダンは葉量も調節することで、通水性の大幅な低下を防ぎ、対して散孔材は、Eの速やかな調節により通水性の低下を防ぐと共に、Ksの回復によって通水性を補償することが分かった。