| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P1-001
山地冷温帯に比べ、亜高山帯では水辺林の研究はほとんど行われていない。そこで、南アルプス・北岳(3192m)付近の渓流に成立している高木群落の樹木の分布、群落構造と微地形との対応を検討した。
全体的な樹木分布を把握するため、流路に対して斜面に直交する長さ30~50m、幅10mのベルトトランセクトを16本設置した。また、60m×70mプロットを1ヶ所設け、毎木調査と地形測量を行い、微地形区分を行った。
本渓流域は、シラビソ、コメツガ、オオシラビソ、カラマツ、ヒロハカツラ、オオバヤナギ、ヤハズハンノキを主とする15種が出現した。ベルトトランセクトデータを対象としてGLMを行った結果、シラビソ、コメツガ、オオシラビソは、高比高ほど分布確率が上がるが、カラマツ、ヒロハカツラ、オオバヤナギ、ヤハズハンノキは、低比高ほど分布確率が上がる結果となった。プロットでは、山腹斜面、谷壁斜面、デブリ、テラス、低位斜面、谷底面の微地形単位が識別された。山腹斜面、テラスの高位の急傾斜面や平坦面は、シラビソ、コメツガ、オオシラビソが優占し、谷壁斜面や低位斜面の低位の急斜面には、ヤハズハンノキが優占し、デブリや谷底面のような低位の緩斜面と平坦面はオオバヤナギが優占した。これらより、亜高山帯渓畔域はでは、山地渓畔域に比べ、種多様性が低く、植生の配列も単純であることが分かった。洪水撹乱の影響を受けにくい立地には、亜高山性針葉樹が分布し、洪水撹乱の影響を受けやすい低位立地は、オオバヤナギ、ヤハズハンノキが分布すると考えられた。このうち、いわゆる渓畔種と呼べるものは、洪水撹乱の影響を最も受けやすい低位緩傾斜地に分布するオオバヤナギのみであった。