| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P1-002
放牧や採草で維持される半自然草地には、周期的な撹乱に適応した多様な草原性植物が生育する。管理放棄や外来牧草の導入などに伴って、草地群落の質(種組成)が大きく変化する中で、本来の種多様性の高い半自然草地群落を保全していくためには、適切な管理を指標する種を明確にすることが重要である。本研究は、阿蘇牧野に成立する放牧型と採草型の草地群落を対象として、それぞれの機能的組成を比較することで、管理形態の違いを反映した指標種を抽出した。
類似度指数を用いて、群落間の種組成および機能的組成を比較した結果、採草型の草地群落は、群落間で種組成と機能的組成がともに類似していたのに対して、放牧型の草地群落は、種組成はばらつくものの機能的組成は類似していることがわかった。群落の種多様性を機能群ごとに比較した結果、採草型は、高茎の夏開花型多年生広葉草本の種数が高かったのに対して、放牧型は、春開花型多年生広葉草本および春開花型イネ科草本の種数が高かった。このように、開花期や植生高の違いは、放牧と採草という異なる撹乱に対する種の適応性の違いを反映していると考えられた。また、INSPANによる指標種解析を行った結果、放牧型と採草型の半自然草地それぞれについて、前述の機能群に該当する草原性植物が指標種として抽出され、放牧型ではオカオグルマ、ミヤコグサ、ウメバチソウなど、採草型ではサイヨウシャジン、アキノキリンソウなどが含まれていた。これらの指標種は、放牧型、採草型の半自然草地の管理指標として有効な種だと考えられた。