| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P1-003
湿原生態系は地球温暖化に対して脆弱な生態系の一つであり、現在縮小傾向にあるが、縮小を決める局所的要因についてはあまり分かっていない。本研究では、30年前と比べて湿原内で縮小している場所と縮小していない場所があることに着目し、湿原の縮小を決める要因を局所スケールで明らかにすることを目的とした。
八甲田山系の5つの湿原において、湿原の境界付近に湿原の外から内に向かって10mのトランセクトを設置し、木本種を対象にした植生調査と環境条件(pH・EC・傾斜)の調査を行った。トランセクトは、空中写真から得られた30年前からの縮小度(10mグリッド)をもとに、縮小しているプロットと縮小していないプロットの数が均等になるように設置した。
まず、種組成(在・不在)の変化パターンをDCAで解析した。次に、種組成と環境要因の関係を調べるため、pH・EC・傾斜・標高・縮小度を環境要因とし、CCAで解析した。また、縮小の有無とトランセクト上の位置による環境要因の違いを、分散分析を用いて検証した。
DCAおよびCCAの結果、湿原外から湿原内に向かって種組成は変化したが、そのパターンには縮小の有無による明瞭な違いは見られなかった。しかし、傾斜とECには、縮小の有無による違いが見られた。これらの結果から、局所スケールでの湿原の縮小のしやすさは微地形の違いによる環境条件の変化によって決まることが示唆される。