| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P1-007

北関東におけるネコノメソウ属(Chrysosplenium L.)5種の生育立地

*深町篤子,星野義延(東京農工大・院・農),中尾勝洋(森林総合研究所)

北関東に位置する渡良瀬川支流横川源流域のシオジ林林床に生育するネコノメソウ属5種(イワネコノメソウ;Ech,ニッコウネコノメ;Mac,ハナネコノメ;Alb,オオコガネネコノメソウ;Pil,ツルネコノメソウ;Fla)について,統計モデルを用いて立地選好性を定量的に明らかにし,種間の共存とすみわけ関係について考察した.

調査地の約100m×40mの範囲に722個の1m×1mのコドラートを設置し,対象種の在/不在,傾斜角度,リター量,コケの被覆度,表層基質,倒木の有無,雨滴浸食の有無を記録し,66地点で全天写真を撮影した.

解析は,対象種の在/不在を応答変数,環境条件を説明変数としてツリーモデルを用いて行い,対象種の出現条件(閾値)をROC曲線から推定し,分離貢献度を算出した.また,種間における共存・すみわけ関係について分布重なり合い指数を求めて評価した.

解析の結果,分離貢献度が高かった説明変数は,Ech,Mac,Albは傾斜角度・リター量・コケの被覆度,Pilは傾斜角度・コケの被覆度・7月の全天開空度,Flaは傾斜角度・表層基質だった.また,Echは緩傾斜地,Macは緩傾斜地でリターが多くない立地,Albはリターが多くなくコケが多い立地,Pilは7月の全天開空度が小さい立地,Flaは大礫が多くコケが多い立地に選好性を示した.

潜在生育域は出現頻度が高いEchを除いて実際の生育域よりも広くなった.分布重なり合い指数は実際の生育域から算出した場合に全ての種間で低く,潜在生育域で算出した場合ではMacとPilの組み合わせ以外で高くなった.

類似した立地選好性を示す種間でも,同所的に出現せずすみわける傾向が認められた.これには,種間競争,分散能力の低さ,渓畔林特有の地表撹乱など共存を妨げる要因の存在が考えられた.


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