| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P1-073
タマリスク(Tamarix属)は、アメリカにおける深刻な侵入植物の一つである。1820年代にアメリカに持ち込まれ、この時期に観賞、防風、河岸侵食対策などの目的で利用された。1920年代から深刻な問題が明らかとなり始め、現在では、特に南西部のほぼ全ての河川流域に侵入し、生態的および社会経済的に大きな影響を与えている。本研究では、侵入地におけるタマリスクの生育特性の解明を目的に、タマリスクの根(特に細根)の垂直分布と土壌環境要因との関係を調査した。
本調査は2009年10月にモハベ砂漠を流れるバージン川下流域(ネバダ州)のタマリスク林において実施した。林内に深さ2 mのトレンチを掘り、各トレンチで深さ10 cm毎に10×10×10 cmの土壌ブロックを採取した。土壌ブロックは実験室に持ち帰り、土壌から根を分別した。分別した根は、根画像解析ソフト(WinRHIZO)を用いて根長および根の表面積を解析した。その後、80℃で48時間以上乾燥させて根の乾燥重量を測定した。土壌調査は、採土法により行った。各トレンチで、100 cm3の採土円筒を用いて深さ20 cm毎に土壌を採取した。土壌は実験室に持ち帰り、2 mmの篩を通過させた。この土壌を80℃で48時間以上乾燥させ、乾燥前後の重量変化から含水比を求めた。土壌の窒素含有率はCNコーダを用いて測定した。また、1 : 5水抽出液を採取してpH及び電気伝導度を測定し、原子吸光光度計を用いてイオン(Na、K、Ca、Mg)濃度を測定した。
本調査地においてタマリスクは、土壌水分の多い層で細根を多く維持する傾向が認められた。本調査地の土壌は砂質であったが、深さによっては粘土層が観察され、これらの層で土壌水分の高い傾向がみられた。今後、土壌の粒径組成などを解析し、考察に加えることも必要であろう。