| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P1-079
樹木の伐採後に発生する萌芽は発達した地下部を再利用可能であるため、実生と比べて成長が速いことが古くから知られている。萌芽個体の急速な成長は、これまで主として地下部の貯蔵物質量との関連について研究が進められてきた。しかしながら、地下部の水分供給能の違いに着目した研究はほとんど行われておらず、萌芽個体の成長特性を理解するうえで重要な課題となっている。そこで本研究では、水分条件が個体の成長を強く制限する乾燥した環境下において萌芽、実生、成木の成長と生理的特性を比較し、水分供給能の違いが葉の光合成や個体の成長に与える影響について考察することを目的とした。
調査は年降水量約300 mmの西オーストラリア州Calingiriの放棄農地に2001年に植栽されたEucalyptus camaldulensis林分において行った。2009年9月に60個体を伐採し、同時に植栽した実生苗158個体、および非伐採個体60個体の成長を半年ごとに測定した。また、2010年2月に各5個体について光合成速度、および葉の水ポテンシャルの日変化を測定した。日中の葉の最大光合成速度は、成木で14.9±1.11 μmol CO2 m-2 s-1、実生で16.3±1.45 μmol CO2 m-2 s-1、萌芽で17.9±0.58 μmol CO2 m-2 s-1であった。また、日中の葉の水ポテンシャルは、成木で-1.21±0.17 MPa、実生で-0.98±0.28 MPa、萌芽で-0.79±0.13 MPaまで低下した。このことから、水ストレスがかかりにくい冬季であっても萌芽、実生、成木でそれぞれ水ストレスの程度が異なり、物質生産に影響することが示唆された。