| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P1-085
大気中のCO2濃度は増加の一途をたどっており、食糧自給や森林保全の観点から、農林水産業に及ぼすその潜在的影響が強く懸念される。CO2濃度の上昇は、地球規模の温暖化や局所的な気候変動を促すだけでなく、農林産業の基盤となる植物の生長・生理に多面的な変調をもたらす可能性がある。一般に、炭素栄養であるCO2の増加は、高施肥条件(高度集約農業など)におけるバイオマス生産にプラスに寄与する。一方、森林植生においては、土壌栄養や水分供給量に依存して、高CO2条件が光合成生産量に有効に働くかは不明である。本研究では北方系落葉広葉樹林を構成する3樹種を用い、高CO2に対する個葉の光合成適応及び現状の林冠構造から、高CO2条件下での林冠総光合成生産量の変調を検討する。検討した樹種は、河畔林を構成しバイオマスエネルギー生産樹木としても注目されているエゾノキヌヤナギ、北方系落葉広葉樹林の初期構成樹種であるシラカンバ、及び同後期構成樹種であるイタヤカエデである。シラカンバ、エゾノキヌヤナギともに高CO2条件ではVcmax、Jmaxともに低下したが、イタヤカエデはVcmaxのみが大きく低下した。Ball-berryモデルパラメータであるmを、Gsmin=0.01として計算した。3樹種とも高CO2下でmが低下し、気孔が閉じた状態で光合成速度を維持する事ができた(水利用効率の増大)。この変化はもともと水利用効率の良いイタヤカエデで大きくなった。以上の変化条件をファーカータイプ及びBall-Berryタイプを統合した個葉光合成モデル及び、直達高と散乱光を分離した林冠構造モデルからなる林冠光合成モデルに投入し、720ppmにおける林冠総光合成生産量を検討する。