| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P1-094

オゾン濃度勾配に沿ったダイズの葉群光合成速度の変化

*及川真平 (東京農業大学), Elizabeth Ainsworth (University of Illiois)

オゾンは最も強力な酸化作用を持つ大気汚染物質である。オゾンが気孔から葉内に入り、アポプラスト内の水や有機物と反応すると細胞内外に様々な活性酸素種が生成される。高濃度のオゾンに曝されると、葉の光合成速度、成長や種子生産量が低下する。葉の光合成速度の低下は、葉群光合成を介して個体の成長に影響しうる。オゾンは葉の光合成を低下させる一方で、葉の老化の促進を介して葉群内の光環境を改善するかもしれない。過去の研究は、比較的低濃度のオゾンを付加してきたが、地上付近のオゾン濃度は上昇を続けている。さらにオゾン濃度が増えたとき、葉群光合成はどのように変化するだろうか?また、高オゾン濃度下で葉の枯死が促進されるとすれば、それは個体の成長にとって有益な応答なのだろうか?我々は、開放型オゾン付加実験装置(FACE)において、9レベルのオゾン濃度下でオゾン耐性の異なるダイズ2品種(Dwight、IA3010)を生育させ、葉の光合成能力の低下が顕著となる開花期直後に葉群光合成を測定した。

両品種で、オゾン濃度の上昇に伴う葉群光合成速度の変化は見られなかった。この結果は、少なくとも開花期直後の葉群光合成が、オゾンによる成長や収量の低下の原因ではないことを示唆する。葉群光合成速度を、葉面積指数と単位葉面積当たりの受光強度、受光強度あたりの光合成速度(光利用効率)の積として解析した。Dwightでは、オゾン濃度の上昇に伴い葉面積指数が減少したが、単位葉面積当たりの受光強度は増加した。光利用効率はオゾンの影響を受けなかった。IA3010ではいずれの特性も変化しなかった。また、葉群最下層の葉の日光合成速度は両品種共ゼロであった。これは、葉が枯れる直前に回収される窒素量がゼロでない限り、個体の炭素獲得を最大化するタイミングよりも遅れて葉が枯れたことを示唆する。


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