| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P1-096
大気中のCO2濃度上昇(高CO2)に対する樹木の光合成や成長反応の解明は、将来環境下での森林のCO2吸収能予測のために必要である。本報告では、2つのCO2付加実験の結果を基に、窒素固定樹種のケヤマハンノキの高CO2に対する光合成・成長反応に及ぼす、土壌中の窒素・リン酸供給量と土壌乾燥の影響を明らかにすることを目的とした。ポット苗を自然光型環境調節施設で2段階のCO2濃度(36と72 Pa CO2)で育てた。実験Iでは2段階の窒素処理(52.5と5.25 pot-1週-1;High-NとLow-N)、実験IIでは2段階のリン酸処理(7.7と0.77 mgP pot-1週-1;High-PとLow-P)と2段階の灌水処理(週3回と1回;WetとDry)を施した。実験IIの窒素量は実験IのLow-Nと同じにし、実験IのLow-Nと実験IIのHigh-PのWetを対照区として用いた。光合成特性(最大炭酸固定速度(Vcmax)、最大電子伝達速度(Jmax))、葉の性質(窒素含量、非構造性炭水化物含量(TNC))、成長特性(乾物と窒素配分)の対照区からの変動幅を比較した。全般的にリン酸供給量の影響が窒素供給量や土壌乾燥より顕著であった。リン酸不足は葉の性質と光合成特性、乾物配分の変化を通じて高CO2に対する成長反応に影響した。リン酸処理間の個体重量の変動幅が高CO2で増加し、リン酸要求量の増加が示唆された。個体重量に対する個体の窒素量や葉の窒素量が高CO2下で減少する傾向を示した。窒素固定樹種では土壌への窒素供給量が着目されるため、乾物量に加えて個体窒素量の高CO2に対する反応に関するデータ蓄積が必要と考える。