| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P1-097
微細藻類の増殖を阻害する大型水生植物のアレロパシーについて,大型水生植物の培養液や抽出物を用いてアレロパシーを評価する研究例がほとんどであり,実環境でもアレロパシーが作用するのかは分かっていない.そこで本研究では埼玉県別所沼に設置された隔離水界について沈水植物イトモPotamogeton pusillus群落がある系・ない系及び隔離水界に導水する隔離水界外(無植栽に相当)の水について,2009年5,6,8,10月の各月に採取したものを藍藻類Microcystis aeruginosa及び緑藻類Pseudokirchneriella subcapitataを用いて本研究で確立した藻類試験方法に基づき試験を行った.その結果,隔離水界外水及びイトモ群落のない隔離水界水では両藻類に対し各月いずれも増殖阻害効果を示さなかった.一方,イトモ群落のある隔離水界水では各月いずれもP. subcapitataには阻害効果を示さないがM. aeruginosaに対しては増殖阻害効果を示すことが分かった.イトモ培養液試験からイトモはM. aeruginosaの増殖を阻害するアレロパシー物質を放出することを確認していること,隔離水界内イトモ群落の有無とM. aeruginosaに対する阻害効果の有無に関連が見られたこと,イトモのバイオマス-M. aeruginosaに対する増殖阻害効果の大きさの間に類似性が示されたことから,本試験で確認された増殖阻害効果はイトモのアレロパシーによると考えられ,実環境においても大型水生植物によるアレロパシーが作用する可能性を示唆することができた.