| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P1-100
ブナは冷温帯林を代表する樹種だが、その更新環境にはまだまだ不明な点が多い。これまで著者らの研究は、太平洋側の針広混交林では常緑針葉樹モミがブナ・イヌブナより遷移後期的であることを明らかにしてきた。もし多くの林床の光環境が閉鎖林冠下なら、太平洋側冷温帯林はモミの優占林になると予測される。しかし現在、太平洋側針広混交林にはイヌブナが多くみられ、また日本海側ではブナが卓越した場所が多い。その要因の一つとして、森林内の光環境が撹乱等によって常に多様であることが考えられる。そこで、モミに対してブナ・イヌブナの更新が有利になるような光環境を推定することを目的とした。
成長速度モデルから、針広混交林中でブナ・イヌブナがモミより早く成長しうる光環境を予測した。その結果、小ギャップ程度の光環境(1日当たり・葉面積あたりの稼ぎが0.8 g glucoseぐらい)より明るい場所では、モミが冬季の光合成などでその2倍稼いだとしてもブナ・イヌブナの成長速度の方が大きくなる事が示された。現実的には、落葉樹林下では冬季の光環境の改善が大きいため、年間を通じて光環境の変化が少ない常緑樹林内のギャップが更新適地であると考えられる。また、あまり明るすぎると草本やパイオニアに対して不利になるであろう。
実際にそのような結果が得られるか検証するため、落葉樹林内および常緑樹林内に様々な光環境のサイトを設けてブナとモミの当年生実生の成長解析を行った。これらの結果をあわせて紹介する予定である。