| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P1-106
近年、東南アジアでは成長速度が大きく伐期の早い外来樹種が植林され、その経済的効果が期待されている。しかし、これらの外来樹種は天然の樹種と比べて水消費量が大きく、乾燥条件下での森林流域水資源に与える影響や、乾燥条件の強度により成長阻害や枯死に至ることが懸念される。カンボジアのコミュニティフォレストにおいてもアカシア、ユーカリといった外来樹種が植林されているが、これらの樹種が強い乾燥期間に順応しているかどうかに関しては不明である。そこで本研究では、天然樹種と外来樹種の蒸散とその環境応答を明らかにすることを目的とした。
観測サイトはカンボジア・カンポンチュナム州内にある、二次林に外来樹種がパッチ上に植栽されたコミュニティフォレスト内である。天然樹種、外来樹種それぞれ2樹種ずつ選び、Granier法による樹液流計測を用いて単木蒸散量を算出した。雨季の降水量は約1600mm、乾季は約370mmで、2009年は比較的降水量が多い乾季となり、4月後半に小雨季が存在した。また、この乾季は湿度が高く、乾季の間の日中飽差は雨季に比べても低い値となった。一方で、2010年の乾季は降水量が少なく、例年と比べ強い乾燥の年であったと考えられる。A. auriculiformisでは2009年、2010年どちらも蒸散量の減少が観察された。しかし、在来樹種であるS. roxburghiiは2010年には蒸散量減少が観察されたが、2009年では蒸散量は減少せず、乾季後半も高い蒸散量を維持していた。したがって、A. auriculiformisに比べると、S. roxburghiiは乾季でも比較的安定して吸水していることが推測された。