| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P1-107
産業革命以降、大気CO2濃度の増加が続いており、森林の高CO2環境への応答が注目されている。シラカンバ・ダケカンバ・ウダイカンバは日本の冷温帯林を代表するカバノキ属であり、陽樹という類似した特性を持つ。高CO2によるこれら成長の速い先駆種の動態変化は、森林生態系に与える影響が大きい。本研究では、これら3種に対して野外条件に近い環境でCO2付加を行い、光合成応答を比較検討した。
実験は北海道大学北方生物圏フィールド科学センター札幌研究林実験苗畑に設置された開放系大気CO2増加(FACE、Free Air CO2 Enrichment)装置を用いて行った。対照区(CO2無付加、370-380 ppm)と高CO2区 (500 ppm、2040年頃を想定)の2段階のCO2処理、および褐色森林土(富栄養)と火山灰土(貧栄養)の2種類の植栽土壌を組み合わせた合計4処理区で、カバノキ属3種の2年生苗を2010年6月より1成長期間栽培した。2010年8月上旬に葉のガス交換速度および単位面積当たりの葉重量(LMA)および窒素含量を測定した。その結果、シラカンバとダケカンバでは高CO2による光合成速度の増加が認められた。しかし、ウダイカンバでは、葉の窒素濃度低下に伴う最大カルボキシル化速度や最大電子伝達速度といった、光合成能力の低下が起こり、高CO2による光合成速度の増加は認められなかった。この事から同じカバノキ属でも、高CO2への光合成応答に明瞭な樹種間差異が存在することを確認した。