| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P1-114

ダケカンバの光合成機能と資源分配に対する土壌水分の影響

*田畑あずさ,小野清美,隅田明洋,原登志彦(北大・低温研)

ダケカンバ(Betula ermanii)は北方寒冷圏に生育する落葉広葉樹であり,湿潤な日本や年間降水量の少ないロシア極東といった異なる水分条件下の生育地に幅広く分布する。植物が様々な水分条件に適応し生育するためには,水分不足条件下での光合成速度の低下に対し形態的・生理的に応答することが必要不可欠である。本研究では異なる土壌水分条件下で生育したダケカンバ苗木を用い,光合成機能や地上部・地下部への資源分配にどのような影響を与えるのかを調べた。

ダケカンバ苗木は,2週間に1度灌水を行う個体を水分処理個体(年平均降水量432.5mm),週に二度灌水を行う個体をコントロール個体(年平均降水量1729.8mm)として生育させた。ダケカンバの生育期である5月から9月にかけて2週間に一度,ダケカンバ苗木の光合成速度等の測定やダケカンバの葉のフェノロジー調査を行い,また3週間に一度ダケカンバ個体の掘り取りを行い,地上部と地下部の現存量および窒素量の測定を行った。

ダケカンバの苗高と全根長,全個体重量は水分処理個体で小さく,個体の部位別では葉重と根重が水分処理個体で小さい傾向を示したが,根とシュートの重量比は処理の影響を受けずほぼ一定の値であった。飽和光下での光合成速度は水分処理個体の夏葉で低下が見られたが,春葉では低下が見られず,葉のフェノロジーも同様に水分処理による変化が見られなかった。発表ではこれらの形態的変化や光合成機能応答の他に,光阻害を防ぐための過剰光エネルギー防御機構反応の応答や,ダケカンバの地上部と地下部の窒素量について議論を行う予定である。


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