| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P1-119
近年西日本を中心にモウソウチク林(竹林)が拡大し、在来の森林と入れ替わる現象が広く認められている。この竹林の拡大が流域の水資源に与える影響を評価するため、九大福岡演習林内の竹林(稈密度4000本/ ha、辺材面積13.1 m2/ ha)において、過去に樹液流計測法(グラニエ法)を用いた竹林の蒸散量推定が行われた(Kume et al. 2010; Komatsu et al. 2010)が、この竹林は比較的稈密度が小さい場所であった。そこで新たに同演習林内の高密度竹林(9000本、28.1m2/ ha)において、2010年4月から同様の手法で蒸散量の測定を行い、稈密度の違いが竹林蒸散量に与える影響を評価した。
モウソウチクの落葉期であり、蒸散量が比較的小さい4,5月において、単位辺材面積あたりの樹液流量は低密度竹林で高密度竹林の2倍程度の高い値を示し、結果、林分あたりの蒸散量は両林分でほぼ等しくなった(快晴の日の日蒸散量:1.5-2.0 mm)。7月以降、林分蒸散量はどちらの林分でも大きく増加したが、低密度竹林の蒸散量は高密度竹林よりも3割ほど高い値を示した(快晴の日の日蒸散量:高密度2.5-3.0 mm, 低密度3.0-3.5 mm)。どちらの林分でも、各日の時間単位の蒸散速度の最大値は同程度だったが、高密度竹林の方が一日の内で活発に蒸散を行っている時間が短く、これが林分間で日蒸散量が異なる要因であった。以上から、竹林の林分蒸散量は基本的に稈密度に依存しない(稈密度の増加に伴って蒸散量が増加することはない)ことが示唆され、林分間の蒸散量の違いは、林分の立地(方位、日照)や土壌の性質(含水量や化学的、物理的条件)の違いが影響を与えている可能性が考えられた。