| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P1-123
乾燥地では水が強く制限されることから、そこに生育する樹木の水利用メカニズムの解明は乾燥地の植物の生態を理解する上で重要である。臭柏(Sabina vulgaris Ant.)はこうした地域に生育する匍匐性の常緑針葉樹である。匍匐枝から不定根を発生させ、匍匐枝を四方に伸ばしながら、群落を拡大する。中国毛烏素沙地に生育する臭柏の不定根は主に土壌表層に分布しているが、樹木の根はより砂質の土壌で深く伸びる傾向がある。本研究では主根だけでなく不定根を持つ臭柏が、どのように水を利用しているのかを明らかにするために、染色液の吸水実験とHeat Ratio Methodによる樹液流速度の測定を行った。染色実験は掘り出した不定根を染色液に浸し、一定時間後に匍匐枝を解体し、断面の染色面積を測定することで、樹液の移動方向と移動量を求めた。その結果、不定根で吸水された染色液は、昼間は枝の先端方向に移動し、夜間には基部方向にも移動した。樹液流速度は二つのパッチ内において、それぞれ不定根(Adventitious Root)を有する匍匐枝(AR)と有しない匍匐枝(noAR)をいくつか選び、それらの基部とARの先端部、およびパッチの主根部にセンサーを取り付け、一年間以上継続して測定した。その結果、noARでは、主根からの給水が主な水源となっていた。表層土壌が乾燥している期間は、ARでは、夜間も主根からの給水が不定根部まで持続したが、降雨によって表層土壌が湿潤になると、主根からの夜間の給水が停止した。これは、表層の不定根と深層の主根の間でHydraulic Redistributionが起こっていることを示唆する。