| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P1-124
高CO2環境下での植物の光合成物質生産を把握するためには、光強度の変化に対する光合成の主な応答反応である光合成誘導反応への理解が必要である。光量が一定の条件下では、生育環境のCO2濃度が高くなると最大気孔コンダクタンスが低下する傾向がある。したがって、誘導反応過程において、もし気孔の開放速度が変化しないまたは低下する場合、光合成誘導反応過程は短くなり、誘導反応の制限による光合成生産量の低下が相対的に少なくなるはずである。
そこで、本研究では、光強度の変化に対する気孔応答が普通に開閉できるポプラ(I55)と気孔開閉が非常に小さいポプラ(Peace)2品種を、380、700、1020ppmのCO2環境下で約1カ月間生育させ、同CO2濃度下で光合成誘導反応を測定した。誘導反応は光合成有効光量子密度を20μmol m-2 s-1(弱光)から800μmol m-2 s-1(強光)へと変化させて計測した。
その結果、飽和光合成速度の50%と90%に達するまでに必要な時間は、両品種とも栽培CO2濃度が高くなると短くなり、普通に開閉できるポプラI55では有意に高くなることを示した。光合成誘導開始から10秒、60秒後の最大光合成速度に対する光合成速度は、栽培条件のCO2濃度の上昇に伴って有意に増加した。しかし、誘導開始から120秒以上は、気孔開放量の小さいPeaceでは栽培条件のCO2濃度上昇による効果が認められなかった。これらの結果から、光合成誘導反応は、高CO2条件下ほど気孔による律速が小さく、その律速は誘導反応の後期にさらに大きくなることを示唆している。