| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P1-125
生産器官である葉の量は、植物の成長に大きな影響を与える。しかし、支持器官を葉量に応じて用意しなくてはならない(Shinozaki 1964)というコストを負う。もし,葉に対する支持器官の量を少なくすることができれば、厳しい環境下での限られた純生産量でも,植物は生存が可能になる(Chazdon 1985)。したがって自然選択の結果,植物は効率的な葉の支え方を獲得しているに違いない。
そこで、葉の支え方の一つである偽茎(細い茎が集合して1本の太い茎となる)について,支持器官として効率的であるか、葉柄の物理的性質(弾性係数)を測定して検討した。
バイケイソウの「茎」とみえるのは葉柄が集合した偽茎(pseudo stem)である。バイケイソウの偽茎は個々の葉柄に分解できるので、個別の葉柄がそれぞれ独立して葉を支える場合と、集合して葉を支える場合との支持効率の違いを比較検討することができる。なお,ばらばらにしたバイケイソウの葉柄は自立できない。
支持効率の違いを検討するために,葉柄の弾性係数を測定した。そして弾性係数の値から,各々の葉(パイプモデルでいう単位パイプに相当)が個々に自立するために必要な葉柄の質量を計算した。
その結果,個々の葉柄が自立するためには、(当然ながら)葉柄の質量が実際よりも大きくならねばならないことが分かった。そして,個々に自立できる葉柄の質量の合計値(非集合時の茎質量)も,実際の偽茎の質量(集合時の茎質量)より大きくなった。
以上より,個々には自立できない単位パイプでも、集合すれば支持能力が高くなることがわかった。偽茎全体としては葉柄の節約になっているのである。それにより、バイケイソウは,支持器官への投資を減らして、生産器官への投資量を増加させているに違いない。