| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P1-132

長野県北部飯綱高原におけるスゲ属6種の開花・展葉フェノロジーと種子散布時期

*横井力(長野県環保研/ 信大・院・山岳), 佐藤利幸(信大・理・生物)

カヤツリグサ科スゲ属植物(Carex)は、海岸から高山、草地や樹林下など多様な環境に生育する多年生草本(一部除く) で、世界で約2000種、日本で約300種が知られている。生育環境や種数が多様なことから、様々な生活史特性があると予測されるが、スゲ属の生活史に関する詳細な研究は少ない。今回、スゲ属の生活史の一端を明らかにするために、開花から種子散布までのフェノロジー及び展葉フェノロジーを、長野県北部飯綱高原に位置する長野県環境保全研究所敷地内で観察した結果を報告する。

調査は、2010年4月下旬から12月中旬にかけて行い、林縁か林床環境に生育する6種を対象とした(アゼスゲ節テキリスゲ(Te、以下種名は略号で示す)、ナルコスゲ(Na)、オクノカンスゲ(Oku)、ニシノホンモンジスゲ(Ni)、ヒメスゲ(Hi)、ヒメシラスゲ(Shi))。開花から種子散布までのフェノロジーは、有花茎を標識し、フェノロジーの段階(①未開花期②単性前期③両性期④単性後期⑤種子登熟期⑥種子散布期)を5日ごとに記録した。展葉フェノロジーは無花茎で最長の葉を標識し、2週間ごとに緑部の長さを測定した。

開花期間はTeが最長で18.6日(平均値)、Hiが最短で12.1日であった。種子登熟期はShiが最長で52.1日、Okuが最短で26.3日であった。種子散布期間はTeが最長で121.8日、Niが最短で5.8日であった。雌雄先熟性は、すべての種で雌性先熟、まれに雌雄同熟であったが、Teの一部の有花茎では雄性先熟であった。

展葉フェノロジ-は、Te、Na、Hi、Shiは調査期間中に葉がすべて枯死したことから、夏緑性であることがわかった。Oku、Nishiは平均個葉最大長の約60~80%が枯れ残った。そのことから冬緑性または半常緑性、常緑性であると推測できる。


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