| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P1-144
土壌窒素の無機化速度を同一斜面系列の上部と下部で比較し,斜面位置による窒素無機化特性の違いについて検討した。調査は,信州大学農学部附属演習林手良沢山ステーションの25年生ヒノキ林で行った。調査林分は平均傾斜35°の東北東向き斜面にあり,平均樹高は斜面下部の方が斜面上部より有意に大きい。土壌の母材は風化した花崗岩で,土壌型は斜面上部が偏乾亜型の適潤性褐色森林土,斜面下部が適潤性褐色森林土である。土壌の培養はレジンコア法を用いて現地の自然条件下で行った。培養は深さ0~5cmと20~25cmの土壌について行った。培養期間は2009年の4月から2010年の11月までの20ヶ月間で,この間に計11回の培養を行った。1回の培養日数は39~45日で,土壌の凍結する冬期は127日間培養した。培養期間中,深さ5cmと25cmの地温をサーミスタ温度計で測定した。また,深さ20cmの土壌の水ポテンシャルをテンシオメータで測定した(冬期を除く)。窒素無機化速度は4月から11月は高い値を示したが,地温の大きく低下する12月から3月は低い値を示した。4月から11月にかけての季節変化は,2009年と2010年で異なった。斜面上部と下部において,窒素無機化速度は両年とも4月から11月にかけて上昇する傾向を示したが,2009年では7月から9月および9月から10月の間低下し,2010年では6月から7月の間低下した。2009年の低下は土壌の水ポテンシャルの低下する時期と一致していたが,2010年は土壌水分が湿潤な時期に低下した。窒素無機化量は,両年ともに0~5cm土壌では斜面下部が上部より大きい値を示した。一方,20~25cm土壌では2009年は斜面下部が大きい値を示したが,2010年は逆に斜面上部が大きい値を示した。