| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P1-155
草原生態系は陸域面積の約30%を占めるため、グローバルな炭素循環に影響を与える重要な生態系の一つであると考えられる。しかし、これまでの草原生態系における土壌呼吸の測定は1~2年間という短期間で行われている場合が多く、長期的測定に基づいた土壌呼吸の経年変動とその環境応答性について注目した研究は少ない。
そこで本研究では、草原生態系における土壌呼吸の季節変動及び経年変動をコントロールする環境要因を明らかにするために、日本の中部山岳域に位置する冷温帯放牧草原(乗鞍岳山麓、岐阜県高山市)を対象として、チャンバー法を用いた土壌呼吸の測定を約1カ月おきに2007年4月から2009年12月までの3年間(積雪期である1月~3月は除く)にわたって行った。同時に、土壌温度と土壌含水率、月降水量の測定も行った。
その結果、季節変動は、各年とも土壌温度と強い相関性が認められた(R2 = 0.85 ~ 0.86)。また、夏季においては、高い土壌含水率が土壌呼吸を上昇させる要因になりうることが示唆された。各年の年間土壌呼吸量は、2007年が755 g C m-2 year-1、2008年が719 g C m-2 year-1、2009年が1037 g C m-2 year-1と推定され、2009年は他の年に比べて土壌呼吸量が約40%上昇した。これは融雪時期と梅雨期の降水量の違い(融雪期の早まりと降水量の多さ)の影響を受けているためであると考えられる。