| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P1-157
森林生態系の炭素収支を明らかにするためには土壌呼吸量の正確な推定が重要である。また、土壌呼吸に影響を及ぼす地温や水分などの環境要因は一日のうちに大きく変化するので、土壌呼吸の日変化を追う研究が行われてきている。しかし、測定に用いるチャンバー内外の環境の違いや測定間隔、森林内でのシステム構築などに依然として問題が残っている。そこで本研究では、これらの問題を解決できうる新型自動開閉チャンバーを用いて土壌呼吸速度の日変化を明らかにし、環境要因との関係性を議論した。
本研究ではチャンバーを自動で開閉させることによりチャンバー内外の環境の差を少なくできる密閉法を採用した。測定システムはバッテリーを電源とし、CO2濃度の測定には小型のCO2プローブセンサーを用いるため可搬性に優れている。本システムを用いて2010年7月~11月までの5ヶ月の各月4~5日間、浅間山麓の落葉広葉樹林において土壌呼吸速度の連続測定を行った。また、同時に地温、水分、降水量の測定も行った。
本測定システムを用いることで、降雨時を含めた一定期間において短い測定間隔で土壌呼吸速度を連続測定することが可能であった。土壌呼吸速度はどの月も20~24時にピークをとり、8~12時に最も低くなる日変化を示した。これは地温の日変化とは一致しておらず、地温と土壌呼吸速度はどの月も低い相関を示した。また、7,9,10月に観測された降雨時には、土壌含水率の上昇に伴って土壌呼吸速度が若干上昇する傾向が見られた。温度-呼吸曲線と地温から算出した土壌呼吸量の推定値と、本研究で測定した実測値を比較すると、夏季には推定値が平均で15.1%過大評価し、冬季には平均で17.0%過小評価する傾向があった。以上のことから、土壌呼吸量や日変化の正確な把握やその制御要因の解明には連続測定は必要であると考えられる。