| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P1-169
人為の働きかけによって維持されてきた草原は,農業の近代化や化学肥料の普及により,利用が放棄され,現在では遷移が進行している.草原に依存する種の多くは,遷移の進行に伴って減少し,絶滅の危機に瀕しているものも少なくない.このような状況において,各地で草原保全の活動が行われているが,保全活動を進めていく上で,各地域における草原の現状を把握することは必要である.
本研究では,管理履歴の異なる草原における植物相を把握し,それらを比較することによりそれぞれの草原の特徴を明らかにし,今後の管理につなげることを目的とした.
調査地とした草原は,広島県安芸太田町深入山,広島県北広島町雲月山及び千町原である.深入山と雲月山は火入れ草地である.深入山は継続的に火入れが行われており,雲月山は1998年から7年間火入れが途絶えた後,部分的に火入れが再開されている.千町原は草刈り場として利用されていたが,牧場造成のため牧草が植えられ,現在では自然公園になっている.いずれも広島県の北西部に位置し,年平均気温は10℃前後,過去10年間の平均降水量は2,292mmであり,県内でも積雪量の多い地域である.
調査は2007年4月から2010年10月にかけて行い,調査地域の全域を踏査し,すべての維管束植物について出現種と出現頻度を記録した.
調査の結果,ワラビ,キンミズヒキ,ミツバツチグリ,ワレモコウ,オミナエシ等はすべての草原で出現し,出現頻度も高かった.一方,シオガマギク,モリアザミ,ハバヤマボクチ,オヤマボクチ等は深入山では出現頻度が高かったが,雲月山では低かった.雲月山では7年間火入れが途絶えており,このことにより個体数が減少した草原性の種があるのではないかと考えられた.