| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P1-170
コウチュウダニ科のダニは甲虫成虫の外部寄生者である。この中でクワガタムシ成虫に寄生するコウチュウダニ科の一群のダニはクワガタナカセと呼ばれるが、これまでに日本では成虫越冬するほとんどのクワガタムシへの寄生が確認された。コクワガタ、オオクワガタ、ヒラタクワガタのクワガタナカセは形態的には同一種だが寄主ごとに遺伝的な隔離が見られるほか、その他のクワガタムシにはそれぞれ異なる種のクワガタナカセガ寄生しており、寄主特異性が高い。ところが日本各地で採集されたコクワガタを調べた結果、福島県以南ではコクワガタナカセが寄生していたが、太平洋側では岩手県以北、日本海側では山形県以北ではスジクワガタナカセが寄生していた。また本州のスジクワガタにはスジクワガタナカセのみが寄生していることを確認した。北海道ではコクワガタナカセもスジクワガタナカセも発見されていない。しかしコクワガタナカセが発見されていない地域のコクワガタに人為的にコクワガタナカセを接種すると、増殖が可能だった。このことから本州北部ではコクワガタナカセが分布しなくなり、スジクワガタナカセのコクワガタへのホストスイッチが可能になっていると推測した。また北方のコクワガタにコクワガタナカセがいない理由は、寄主との温度耐性の違いやダニの分布拡大の遅れ(ダニもクワガタも分布を北へ拡大したが、ダニは寄主よりも分布拡大が遅い)などが考えられるが、今のところ明らかになっていない。