| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P1-177

三瓶山草原における指標植物抽出の試み

*井上雅仁(三瓶自然館),高橋佳孝,堤道生(近中四農研センター)

半自然草原が生物多様性保全上,重要な生態系であるとの認識が高まり,各地で管理の再開や保全活動が進められている.島根県の三瓶山も,火入れ,放牧などの管理がなされ,半自然草原が残る数少ない場所となっている.複数の管理の存在により,シバ草原,ススキ草原など,相観の異なる草原植生が成立している.一方,例えば同じススキ型草原であっても,管理履歴や環境条件の違いにより,種多様性は異なることが指摘されており,同じ型の草原であっても目標となる植生構造を検討する必要がある.また,草原保全にボランティアなどの参加が盛んになる今日,研究者だけでなく市民レベルで,多様性の高い草原を見分けられる方策も求められている.識別しやすい指標植物による評価は,簡便な手法であるとともに,将来的には環境支払いなどの施策にも応用できると考えられる.

そこで本研究では,当該地域の草原を対象として,多様な草原性植物を含む草原タイプを指標する植物種を抽出することとした.当地の草原は,相観や管理形態から大まかに,ススキが優占する高茎草原と,放牧下にある草原とに大別できる.これらは管理や利用目的が異なることから,それぞれの指標植物抽出を目指した.

抽出作業は,以下の手順に沿って行った.1) ススキ型草原と放牧地の2タイプを対象に,それぞれ複数箇所で植生調査を行う.以下の解析はタイプ毎に行う.2) 植生調査データをTWINSPANにかけグループ化する.3)INSPANにより各グループの指標種を抽出する.4)各グループの平均出現種数などから種多様性の高いグループを選定し,同グループの指標種を候補種とする.5)識別しやすさなどから複数の指標植物に絞り込む.これらの手順で抽出された指標植物と草原性植物の多様性との関係について報告する.


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