| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P1-179
ある空間の全体の生物の種の多様性(γ多様性)は、その空間内の局所的な多様性(α多様性)と、局所的な種組成がその空間内でどの程度変化するか(β多様性)によって決まる。本研究は、環境省・モニタリングサイト1000プロジェクト森林・草原調査の毎木調査データを用いて、1haプロット内の樹種多様性と群集の空間構造が日本全国の気候勾配に対してどのように変化するかを解析した。さらに、β多様性が高くなる主要な要因である種の分布に対する分散制限と空間内のニッチの多様さが、そのパターンにどのように寄与しているかを検証した。
環境省・生物多様性センターより公開されている天然林・二次林の毎木調査データのうち、調査区がほぼ1haで調査区内が10×10mの区画に区切られている35調査区のデータを用いた。胸高直径5cm以上の全ての木本個体を解析対象とした。
調査区(1ha)あたりの種多様性は年平均気温(以後気温)が高いほど高かったが、その増加の程度は気温が高くなるほどゆるやかであった。区画(0.01ha)あたりの種多様性の平均も気温が高いほど高かったが、その増加の程度は気温が高くなるほど急であった。区画間の種組成の非類似度は、中程度の気温(年平均気温10℃前後)で最も高くなった。気温が高くなるほど区画間の距離と非類似度の相関は高く、気温が低い場所ではほとんど相関がなかった。このことは、温かい場所ほど区画間の非類似度に分散制限が寄与していることを示唆する。また、中程度の気温の場所では、非類似度が高いにも関わらず分散制限は非類似度にほとんど寄与していないことから、多様なニッチが発達していることが示唆された。