| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P1-183
ダイコンソウ属は世界に約50種が生育し、日本国内には4種が生育している。国内に生育する4種のうちミヤマダイコンソウは風散布型の種子を、ダイコンソウ・オオダイコンソウ・カラフトダイコンソウは動物付着散布型の種子を産する。Smedmark & Eriksson(2002)は種子形態と分子系統解析を併せて世界的なダイコンソウ属の分類を行っているが、日本国内のダイコンソウ属は1種が扱われたのみであり、国内種の系統関係については調べられていない。
本研究では日本産ダイコンソウ属の系統関係を明らかにするために分子系統解析を行った。また、北村・村田(1961)や清水(1997)によって外部形態の類似が指摘されている動物付着散布型種子を産する3種に着目して、それぞれの種の種子外部形態を測定するとともに、成熟個体の根出葉の標本から外部形態を観察し定性的に差異を示した。系統解析には葉緑体DNAのtrnL-trnF領域985bpを用いた。種子外部形態の測定には短径・長径・花柱それぞれの長さを用いた。
その結果、系統解析においては動物付着散布種3種が同じクレードに属した。3種間の遺伝的差異はダイコンソウ、オオダイコンソウの一部、カラフトダイコンソウの間では全くみられなかった。オオダイコンソウにおいては種内でわずかに遺伝的差異がみられた。種子外部形態測定においては短径/長径でカラフトダイコンソウ<ダイコンソウ<オオダイコンソウとなった。花柱の長さにおいてはオオダイコンソウ<ダイコンソウ<カラフトダイコンソウとなった。根出葉の外部形態においては葉の大きさや鋸歯の切れ込みの深さ、剛毛の有無で違いが観察された。これらのことから、ダイコンソウ属の動物散布種3種には遺伝的差異はほとんど見られないが形態的な差異がみられることが明らかになった。