| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P1-184

Macalanga bancana茎内のアリの巣から出現する菌類の多様性

*大園享司(京大・生態研セ), 広瀬大(日大・薬)

葉や茎を変形させてアリ類を営巣させ、それらのアリ類と密接な相利共生関係を結ぶ植物をアリ植物という。アリと菌類の共生関係として、ハキリアリ類との栽培共生がよく知られている。近年では、アリ植物やその共生アリとのあいだにユニークな関係を持つ菌類が相次いで発見されており、植物―アリ―菌類の三者間相互作用系に注目が集まっている。演者らは、アジア熱帯に分布するアリ植物のオオバキ属―シリアゲアリ共生系を材料として、この相互作用系に関わる菌類の多様性と、菌類を含めた三者間相互作用系を明らかにする目的で研究を進めている。本発表では、Macaranga bancana茎内のアリの巣から出現する菌類の多様性と機能についての予備調査の結果を報告する。2009年6月にマレーシアのランビルヒル国立公園において、内側がアリ室として利用され黒色化した茎(直径1cm、長さ2cm、軸方向に半分割)20片を採取した。これら試料片を20℃の湿室内で2週間培養し、出現した菌類の形態観察とDNA塩基配列(ITS領域、28S)により分類群を検討した。その結果、9分類群の菌類が得られた。Nectria haematococcaLasiodiplodia theobromaeの2種はいずれも20試料片中13片(出現頻度65%)ともっとも高頻度で出現した。L. theobromaeはマンゴーやカカオの病原菌として知られるが、本種の黒色菌糸はアリ室内部の黒色化に関与している可能性がある。Isaria takamizusanensisはアリ室に共生するカイガラムシの関連菌と推察される。このほか昆虫関連菌と考えられる分類群や、リター菌・土壌菌であるAspergillus nigerなどが分離された。今後はこれらの菌類種のアリ室における生態的な役割を調べるとともに、オオバキ属の他の植物種を対象とした菌類多様性の比較調査を行う予定である。


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