| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P1-191
本研究では,同所的に生息する2種の樹洞営巣性齧歯類であるタイリクモモンガ Pteromys volans とヒメネズミ Apodemus argenteus はその体サイズや利用空間に基づいて営巣する樹洞を分けると考え,検証を行った.筆者らは2009年と2010年の7月から10月に136個の樹洞を,2010年の7月から10月に様々な高さに設置された87個の同型の巣箱を調査し,タイリクモモンガとヒメネズミの営巣をそれぞれ,樹洞において35個と21個,巣箱において40個と14個確認した.タイリクモモンガによって営巣された樹洞を有する樹木のDBHは平均30.2 (幅:19.9 – 47.7) cmで,樹洞の入り口サイズは4.5 (3.0 – 9.5) cm,樹洞高は1.9 (0.7 – 3.0) mであった.またヒメネズミにおけるそれらは,それぞれ26.8 (12.7 – 47.8) cm, 3.9 (1.5 – 5.5) cmおよび1.2 (0.3 – 2.3) mであった.解析の結果,タイリクモモンガはヒメネズミよりも高い樹洞に営巣していたことがわかった.その一方で,DBHや樹洞の入り口サイズには違いが見られなかった.加えて,タイリクモモンガあるいはヒメネズミによって営巣された巣箱の入り口高は,それぞれ1.9 (1.1 – 2.8) mあるいは1.4 (0.7 – 1.9) mで,巣箱においても樹洞と同様の傾向がみられた.これらの結果から,これら2種は利用空間に基づいて営巣する樹洞を分けていると考えられた.