| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P1-199
ニッチ構築とは「生物活動によって自身や互いの局所環境の自然選択圧に変更を加えること」である。ミミズは穴を掘ることによって採餌や移動を行うとともに、住処や、その通り道である坑道を構築し、土壌の性質を変化させる。また、その糞はマクロ団粒として有機物を保持することが知られており、これらの構造物を利用することによって陸上生活に適応したと考えられている。この様な土壌の変化は、ミミズによるニッチ構築によって生じる生態系改変であり、多世代に渡る改変の積み重ねが、餌資源である植物の成長に作用し、自身の適応度をあげていると考えられる。ミミズによるニッチ構築の重要な点として、土壌動物群集への影響が考えられる。特に、ササラダニのような小型の節足動物は、ミミズに比べて体幅が約0.06倍と体サイズが小さく、自ら土壌に穴を掘ることが出来ないため、直接的に影響を受ける動物群である。海外で行われているミミズと小型節足動物群集の研究例の多くはツリミミズ科を主とする表層採食地中性種と地中性種を対象としており、表層性種の知見があまり見られない。そこで、日本で優占するフトミミズ科が多く属する表層性種のニッチ構築が小型節足動物、特にササラダニ群集にどのように作用するのかに着目し、茨城大学農学部附属フィールドサイエンスセンター内カバークロップ利用長期試験圃場において、ミミズ導入試験を行った。ライ麦とヘアリーベッチの2種類の不耕起カバークロップ圃場に毎年平方メートル当たり100個体のミミズを2年間導入し、小型節足動物の採集を行った。土壌の容積密度、含水率、全炭素、全窒素を測定し、瓶培養法より窒素無機化速度を算出した。これらから、ミミズによるニッチ構築がササラダニ群集に与える影響について報告する。