| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P1-200
都市近郊の森林は小規模で孤立している場合が多く、大規模な面積を確保することが困難である。そのため、このような地域の森林での生物多様性を保全する場合には、生息地の量(quantity)の代わりに質(quality)を向上させることが有効な手段の一つとなる。しかしこれまでの研究では、分断化した景観における個々の生息地の質は、定義の難しさから均一として扱われること多かった。そこで本研究では、分断化した生息環境における生息地の量(地形など)と質(資源など)が地表性甲虫類(ゴミムシ科、シデムシ科)の生息状況に及ぼす影響を明らかにすることを目的とした。
調査は東京都多摩地域(10×15km)における40か所の森林(1.1ha~122ha)で行った。地表性甲虫類の調査はピットフォールトラップ(6月、8月)を用いた。生息地の量的要因として、①森林面積、②形状(SI)、③山地からの距離、④標高差、⑤傾斜角度の5つ、質的要因として、①草本被度、②リター層、③枯木量、④林相、⑤食物資源量、⑥林縁からの距離の6つを設定した。
調査の結果、29種3768個体の地表性甲虫類が採取された。解析の結果、量的要因と地表性甲虫類の種数の間に有意な関係は見られなかったが、質的要因が種数に及ぼす影響は認められ、草本被度・リター層が正の影響を、常緑広葉樹林では種数が減少することが明らかとなった。この結果は、都市近郊の小規模な森林において、質的要因が地表性甲虫類に与える影響が大きいことを示唆している。さらに、生息地の量的要因・質的要因が各地表性甲虫類種に及ぼす影響を解析した結果、各環境要因に対して種ごとで異なる反応を示した。以上の結果から、都市近郊林の管理において地表性甲虫類が指標として有効かを検討する。