| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P1-203
冷涼な気候下における植物の物質生産速度は、気温や降水量だけでなく、利用可能な栄養塩類の量にも律速されている。中型土壌動物は、土壌微生物と共に植物遺骸の分解に関与し、窒素の無機化等を通じて植物の物質生産過程にも影響を及ぼすものと考えられる。これまで、日本の高山帯においては、ハイマツ群落を主な対象として、中型土壌動物の生息密度やその季節変化、群集構造についての報告がなされている(Hijii, 1994;Soma, 1998)。しかし、中型土壌動物の生息密度と環境との関係については、未だ十分には議論されていない。本研究は、ハイマツ群落における中型土壌動物群集の構成と密度が、標高傾度に沿ってどのように変化するのかを明らかにする目的で実施した。
富山県立山町にある天狗平(標高2300 m)、ミクリガ池周辺(2420m)、室堂山(2660 m)、一ノ越(2700 m)、浄土山(2830 m)の計5地点で調査を行った。各調査地において、地表面から5㎝までの土壌を10ヶ所採取し、ツルグレン装置を用いて土壌動物を抽出した。 抽出を行った後の土壌サンプルは乾燥し重量を測定した後、ハイマツの葉、枝、植物の根、その他のリター(ハイマツ以外の葉など)、土砂等に分けそれぞれの重量を測定した。
トビムシ目の捕獲個体数は、標高と正の相関を示したが、ダニ目については、腐食性、肉食性ともに、標高傾度に沿った捕獲個体数の変化は統計的には検出されなかった。また、土壌含水率と捕獲個体数との関係については、トビムシ目については負の相関関係が見られたが、ダニ目については見られなかった。これらの結果から,分類群間の違いについて考察を行った。