| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P1-205

印旛沼におけるオニビシ繁茂に伴う鳥類相の季節変化

*川津正之(東邦大・理),鏡味麻衣子(東邦大・理)

印旛沼において水草オニビシTrapa natansが大繁茂している。漁船の操業に影響が出ることから、刈り取りがしばしば行われている。だが、オニビシが生物にどのような影響を与えるかについては、まだ明らかではない。本研究では鳥類を対象に、オニビシの繁茂に伴い鳥類の種組成や個体数がどのように変化するかを明らかにする事を目的とした。

調査は5月から11月まで週一回、西印旛沼においてヒシの繁茂する場所(ヒシ帯)とヒシの無い場所(対照区)にてラインセンサス法での調査を行った。

西印旛沼全体で39種が観察された。ヒシ帯では33種が確認され、対照区では32種が確認された。ヒシ帯と対照区の種数の季節変化に有意な差は認められなかったが、個体数はオニビシ繁茂中はヒシ帯で多く(平均1.8倍、最大7.6倍)なった。ヒシ帯では8、9月にはダイサギやチュウサギがオニビシを足場として利用し採餌を行い、10月にはオオバンがオニビシの葉や実を採餌している所が多く観察された。また繁茂期間中を通してカイツブリが多く見られ、オニビシを巣材として利用する様子も確認された。対照区では8、9月にコアジサシやアジサシがダイビングしての採餌を、年間を通してカワウの潜水採餌が多く見られた。ヒシ帯では開放水面が少ないため対照区の利用を利用していたと考えられる。

これらの結果から、オニビシの繁茂は鳥類の新たな利用場所を創出する事で個体数を増加させる一因となっていると考えられる。一方、種によっては開放水面が減少するため個体数が抑えられる可能性もある。そのため鳥類の保全の観点からはオニビシを繁茂させすぎず、かつ刈り取りすぎぬように適度な管理を行っていくことが必要であるといえる。


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