| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P1-206
タナゴ類はコイ科の淡水魚で、生きた二枚貝に産卵する特殊な繁殖生態をもっている。国内では最大6種が同所的に生息する事が知られているが、生息環境、産卵に用いる二枚貝の種類や大きさ、産卵時期などを違える事で共存しているといわれている。しかし、種間関係や物理環境の働きによる種数や種の出現パターンの違いなどを定量的に調査した研究例はほとんどない。本研究では在来種としてヤリタナゴ、外来種としてタイリクバラタナゴの2種を用いて、小河川内における生息環境の違いを種間関係や物理環境の働きなどの観点から比較・検証した。
調査は千葉県北西部に位置する全長約2km、河川幅平均1.8m、流速平均9.6cm/sの 小河川にて、2010年5月から12月下旬の隔週で行った。河川全体を約50mおきに1地点、合計36地点設置した。1地点につきセルビン1個を用いて魚類を採捕した。また物理環境に関してはセルビンより下流側4mの範囲で計測した。
合計捕獲個体数はヤリタナゴが324個体、タイリクバラタナゴが355個体であった。出現環境を比較すると、タイリクバラタナゴは比較的水流の緩やかな個所で出現したのに対し、ヤリタナゴは流速との関係は見られず、水面を覆うカバーの割合が高いところに出現していた。
以上の環境利用に、タナゴ類の環境選好性や種間関係がどのように寄与したかを考察した。