| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P1-209

森林生態系におけるクモ類の群集構造と餌資源利用様式

*小栗大樹,肘井直樹(名大院生命農)

森林生態系では、クモ類(Araneae)は、樹冠層、土壌層いずれにおいても、常に高い個体数密度と現存量を維持しており、節足動物群集の主要な捕食者の一群を形成している。しかし、クモ群集とその餌動物との関係を明らかにした研究は少なく、特に森林では、クモ類を核とした節足動物群集の食物網構造がほとんど明らかになっていない。本研究では、スギ林の樹冠層と林床においてクモ類を含む節足動物を定期的に調査し、生息場所ごとのクモ群集と潜在的な餌資源との対応関係を明らかにした。

調査は愛知県北東部の40年生スギ人工林において、2008年7月-2009年12月に、月に1度行なった。樹冠層では、各調査木(樹高23 m、胸高直径 24 cm、5本)の枝葉に対するビーティングと隣接タワー上に設置した水盆トラップ、林床ではピットフォールトラップにより節足動物を採集した。また、樹冠層における採集は、ほぼ生葉のみからなる上層と、枯枝葉が優占する下層にわけて行なった。さらに樹冠層では、造網型クモ類の出現頻度を記録した。採集したクモ類は種、餌動物は目まで同定し、さらにクモ類を徘徊・造網といった生活型、餌群集を歩行・飛翔といった分散型に分類して生息場所ごとの対応関係を調べた。

樹冠層では、上層、下層の両層で徘徊型のクモ類が優占したが、上層では円網性の造網型クモ類が空間を広く利用していた。餌群集は全体的にトビムシ目、ダニ目が優占していたが、上層ではハエ目の個体数が下層に比べて有意に多かった。林床ではクモ相が樹冠層とは異なり、網目が密な造網型クモ類が優占した。一方、餌群集はトビムシ目、ダニ目などの小型節足動物に限られていた。以上の結果、樹冠層と林床いずれにおいても、クモ類の生活型と餌群集の分散型の構成には、明瞭な対応関係がみられた。このことは、クモ類が生息場所ごとの餌環境に対して、固有の群集を形成していることを示唆している。


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