| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P1-210
パッチ状に存在する生息地にすむ生物にとって、生息地の連結性は個体群の存続に非常に重要であることが知られている。しかし、そのような生息地を好む外来種が侵入した場合、外来種の分散力は大きいことが多いため、生息地の連結性は在来種より外来種の個体群に対して正の効果をもち、見かけ上は生息地の連結性が在来種の個体群に対して負の効果になりうる。こうした外来種の侵入が引き起こす連結性の負の効果は、生息地が多いほど在来種の個体数が減少するというパラドックスを引き起こすため保全上とりわけ重要な問題である。こうした問題では、外来種の捕食者の存在を考慮することが解決の糸口になりうる。
本研究は、岩手県一関市の溜池群で行われたツチガエルとウシガエルの鳴き声調査のデータを用いて、(1)外来種であるウシガエルが在来種のツチガエルに対して連結性の負の効果を生じさせる、(2)ウシガエルの捕食者と考えられる魚類の存在が在来種に対する連結性の負の効果を和らげる、という仮説を検証する。仮説を検証するため、具体的には以下の二つの解析を行った。まず、ベイズの枠組みを用いて発見率を考慮しながら、どのような要因がウシガエルとツチガエルの個体数に影響しているか同時に解析した。これにより、ウシガエルの影響を考慮した場合、連結性がツチガエルの個体数に対して負の効果を示さないことを明らかにする。次に、上記の解析結果を用い、魚類がその地域に全く存在しない場合のウシガエルおよびツチガエルの個体数をシミュレーションした。分散力の大きい外来種が在来種に連結性の負の効果をもたらすという問題と、外来種に関わる種間相互作用を考慮することの保全上の重要性を明らかにしたい。