| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P1-211
サギはコロニーを形成して営巣することにより、コロニー直下の地表に排泄物やひなの死体を供給する。これらの物質は、腐肉食性の甲虫に利用されるため、サギコロニー下には特有の甲虫群集が形成される。しかし、サギコロニーは永続的ではなく、時に移動するので、サギコロニー下の甲虫群集もコロニー移動の影響を受けるものと予想される。しかし、サギコロニーの移動が、直下の甲虫群集にどのような影響を与え、その影響がどのくらいの時間で生じるのかについては、ほとんど分かっていない。本講演では、サギコロニーの移動の前後で、直下の甲虫群集がどのように変遷したかについて報告する。
調査は、滋賀県彦根市を流れる犬上川下流の河畔にある竹林で行われた。2007年までサギが営巣を行っていた竹林から2地点、サギが営巣していない竹林から1地点を選び、ピットフォールトラップを用いて、地表性甲虫相を調べた。この結果を、サギが営巣していた2007年のデータと比較することにより、サギ営巣の影響を検討した。調査は、2010年4月13日から12月30日まで行った。
サギが営巣を終了して3年が経過した調査地では、サギ営巣時と比べて、シデムシ科、コガネムシ科(特にOnthophagus属)をはじめとする腐肉食性甲虫の種数、個体数ともに著しく減少した。これに対して、雑食・肉食性のオサムシ上科の種数、個体数がともに増加し、その甲虫群集はサギが営巣を行っていない調査地に近かった。
以上の結果は、サギが営巣を終了するとすみやかに腐肉食性甲虫は減り、代わりに雑食・肉食性甲虫が優占することを示している。しかし、雑食・肉食性甲虫が、なぜサギ存在下でほとんど生息しないのかは、依然として謎である。