| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P1-221
病原性微生物の感染は生存や繁殖を通じ生物に負の影響を与える。その際、感染のタイミング、初期の感染量、宿主の性やコンディションはその後の配偶者選択を含む適応度成分に影響を与えると考えられる。
沖縄では不妊虫放飼法(SIT)を用い、イモゾウムシをターゲットにした根絶事業が行われている。SITでは対象とする害虫を大量に生産し不妊化した後野外に放飼するため、サツマイモ塊根を用いた大量増殖と累代飼育が行われている。しかし、現在の大量増殖法では生産数の低下が生じており、その原因として原虫Farinocystis.spの感染が確認されている。本原虫の野外での生態は明らかではないが、大量増殖ではイモゾウムシの羽化後に経口感染し、脂肪細胞などから栄養を摂取することで宿主の体内で増殖し、糞と共に体外へ排出され次に宿主へと分布を拡大する。原虫感染によるイモゾウムシの寿命の低下に性差がないものの、次世代数の低下はメスのみで観察されている。SITでは放飼したオスがどれだけの野生メスと交尾できたのかということが事業を効果的に遂行する鍵となるため、特にオスでの原虫感染の経時的影響の解明は重要である。しかし、
先行研究では感染初期の個体を用いて適応度が評価されているため、原虫感染の進行に伴った適応度成分の評価が正当に行われていない可能性がある。本研究では、感染のタイミング、初期の感染量、宿主の性をコントロールした上で、体内での原虫の増殖と交尾行動を経時的に調査し、原虫感染が適応度成分に与える影響を評価する。