| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P1-228
雄が同性間競争と配偶者選択の両方をおこなう種では、同種他個体との遭遇頻度が、その後の配偶者選択に影響を及ぼすことが予想されている。テナガホンヤドカリでは、雌との遭遇頻度が低いときほど、雄は成熟度の低い (= 交尾まで時間を要する) 雌でも交尾前ガードすることがわかっている。また本種の大型 (優位) 雄と小型 (劣位) 雄では、雄が2個体の雌と同時に出会って配偶者選択するときの基準が異なる。今回は本種を対象に、雄が交尾の何時間前から雌をガードするかという閾値に関して、以下の仮説を検証した。
(A) 小型雄は、大型雄との遭遇頻度が異なると、雌に対して異なる閾値を示す。
(B) 大型雄は、遭遇頻度の異なる雌に対して異なる閾値を示す。
繁殖期直前から終盤まで、以下の遭遇頻度条件で飼育実験を実施した;高頻度: 大型雄と小型雄および雌各1個体を1つの水槽で一緒に飼育、中頻度: 小型雄と雌各1個体が「高頻度」水槽の大型雄と8時間ごとに遭遇、低頻度: 同じく24時間ごとに遭遇、無遭遇: 小型雄と雌各1個体だけで飼育し、大型雄とは遭遇しない。全水槽で各雄がガードしていたか否かを8時間ごとに記録して、実験終了後に各雄のガード回数の集計と全個体の体長測定を実施した。
小型雄のガード回数は中頻度条件で最多となり、無遭遇条件で最少だった。これら2条件間でガード回数の有意差があった。また、体長が大きな小型雄ほどガード回数が多かった。これらの結果から、雄間競争で劣位な小型雄は、優位雄との遭遇頻度に応じて配偶者選択の閾値を調節することが示唆される。一方、大型雄のガード回数は、低頻度条件の雌に対して最多であり、他の2条件と有意に異なっていたことから、大型雄も遭遇頻度に応じて各雌に対する閾値を調節し、遭遇頻度の低い雌を長くガードすることが示唆される。