| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P1-235
多くの鳥類、哺乳類は植物の果実を採食し糞として種子を排出する。鳥に散布されて発芽した実生が、母樹下の実生に比べて、生存率が良いという研究は多くある。一方、窒素やリンを含む糞と共に排出されたことや1糞中に含まれる種子数が種子の生存、実生の成長にどのように影響しているかを検討した事例は少ない。例えば、周食散布型果実をもつ樹木の種子は鳥に散布された場合、糞中の種子数は通常1個であるのに対し、ホンドタヌキをはじめとする中型哺乳類に散布された場合は糞中に数十個の同種種子が含まれる場合がある。そこで土壌養分が貧弱な海岸砂丘林に普通なカスミザクラとヤマウルシを対象に当年生実生のサイズの違いをタメフンの有無による当年生実生直下の土壌の化学性の観点から検討したい。
秋田県の海岸マツ林において発見したタメフン由来実生とそのごく近くの鳥散布由来の単体実生の直下の土壌を5地点ずつ採取した。採取する際、深さ0-5cmと5-10cmの2層に分けて採取した。採取した土壌は、pH、EC、全炭素、全窒素、交換性陽イオン、CEC、可吸態リン酸を測定し、CN比も算出した。カスミザクラ(タメフン由来n=126、単体n=53)と、ヤマウルシ(タメフン由来n=136、単体n=51)のそれぞれの実生の主軸長と主根長、地上部と地下部の乾燥重量を測定し、地上部と地下部の乾重比を計算した。また実生採取場所の相対光量を測定した。
カスミザクラでは、主根長が単体由来のほうがタメフン由来に比べて有意に高かった。ヤマウルシでは、地上部と地下部の乾重比が単体のほうで有意に高かった。
こうした実生のサイズの違いを土壌の化学性および光環境、実生の局所的な競争の観点から評価する。